私たちはこの8つの脳番地を常に活動させています。例えば買い物なら、店に行って売り場を歩き(運動系脳番地)、商品を見て(視覚系脳番地)、店員に質問をして(伝達系脳番地)、説明を聞く(聴覚系脳番地)。商品の特徴や魅力を理解し(理解系脳番地)、過去の経験を思い出しながら(記憶系脳番地)、ドキドキワクワクし(感情系脳番地)、買うべきかどうかを考えて決断する(思考系脳番地)。こんな具合です。

しかし、この8つの脳番地をうまく活用できていないときにムダ遣いが発生します。ムダ遣いは脳への刺激となるので、眠っている脳番地を起こす「覚醒作用」があるのです。ムダ遣いは、この覚醒作用を求めてやってしまうといっても過言ではありません。

脳は、ボーッとした未覚醒の状態を嫌います。シャキッとしたいのです。そこで何かしら脳を目覚めさせる刺激を求めるわけですが、それに最適なのが「物質依存」です。タバコや麻薬もそうですが、ムダ遣いにもそうしたものに近い、脳への覚醒作用があるということなのです。

同じことは、睡眠不足でも起きます。夜更かしし、日中眠い状態でいたときは脳の覚醒が低い状態にあります。そういうときに何か自分を刺激してくれるようなものがあったら、つい買ってしまう。

同様に、夜9時を過ぎると脳の思考系脳番地の働きが落ちてきます。しかも一日の疲れが出る時間帯なので、脳の覚醒はすごく下がる。このときにネットショッピングなどをするとムダ遣いをしてしまいがちです。

脳の覚醒が低いと、過去を振り返ったり未来を見通したりする力も落ちてしまいます。つまり、過去にムダ遣いした経験を顧みることもなく、先のことを考えれば今ここでお金を使ってはいけないという自制も効かなくなるのです。

ムダ遣いをする人は大きく2つのタイプに分かれます。1つは、家にこもって外出もせず、ネットショッピングをしてしまうタイプ。もう1つは、外出していろいろ動き回って衝動買いしてしまう活動的なタイプ。前者は動かないから覚醒も低く、刺激を求めてムダ遣いをしてしまう。後者は行動しすぎるので脳全体の覚醒は比較的高いのですが、集中と散漫のバランスが悪く、不安定なのです。