2色に抑える、欧州独自の理由

さらに、トレンドを明確に示したいときは、グラフに矢印の補助線を入れたり、グラフで目立たせたいデータがあれば、丸で囲ったりするなど、ひと手間加えることで、内容がよりわかりやすくなるように工夫した。

リピーターを含め訪日客が急増している。

「パワポはカラフルな色使いもできるのですが、プレゼン資料ではモノトーンにするか、1シートでなるべく2色に抑えました。すっきりした印象になるからです。また、手元のプレゼン資料のドキュメントに、マーカーで色付けをする人が多く、地色がシンプルなほうが都合がいいからです」(中井さん)

特に神経を使ったのは、ストーリーの組み立てで、「最初のシートでは、当日の議題や予定を示して、メンバーに確認してもらいます。2枚目のシートでは、セールスの現状について概観していますが、ここがポイントです。まず現状を肯定して、営業部門の働きを評価しました。初めから頭ごなしに現状を否定すると、特に主張好き、議論好きな参加メンバーが反発してしまうからです」と中井さん。

3枚目のシートで中井さんはセールス活動の課題を指摘し、改善の余地があることを提示。ここでも否定的な表現は避けて、前向きな言い回しにこだわった。

「セールス活動の改善では、メンバーのやる気をそぐことなく、能力を最大限に引き出していくことが重要だからです。その意味でもパワポ資料は『説明型』ではなく、『シンプルで理解しやすいもの』を心がけました」と中井さんはいう。

ANAのモットーは「一歩先回りした顧客への気遣い」。そこで中井さんは、欧州でも“ANA流”の気遣いを発揮して、パワポのプレゼン資料も聞き手の気持ちに寄り添う形にしたわけだ。外国人向けにプレゼンをする機会があれば、ぜひ参考にしていただきたい。