ANAHDはコロナ禍を機に、働き方に柔軟性を持たせる施策を相次いで打ち出した。その結果、人件費を削減しながら、従業員満足度を上げることができたという。日経ビジネス・高尾泰朗記者の著書『ANA苦闘の1000日』(日経BP)から、一部を紹介しよう――(第2回)。
新人事制度を利用して、酒田市に移住した客室乗務員たち。中央が坂本里帆さん。
写真提供=ANAHD
新人事制度を利用して、酒田市に移住した客室乗務員たち。中央が坂本里帆さん。

勤務日数・居住地を自由に選べる新制度を創設

「今のタイミングなら『二足のわらじ』をはけるなと思って」。

ANAの客室乗務員、坂本里帆は21年12月、都内から引っ越した。引っ越し先は庄内空港がある山形県酒田市だ。

ANAは羽田空港と庄内空港間を約1時間で結ぶ航空便を、通常1日4往復運航している。ただ、坂本はこの路線のみを担当するわけではない。客室乗務員としての勤務地は羽田。出勤の度にこの路線を使って「飛行機通勤」している。

ANAは客室乗務員の新しい勤務制度を21年度に導入した。勤務日数などを希望に応じて選択し、居住地を自由に選べるようにするものだ。副業なども柔軟に認める。

坂本は21年春に、国内線の客室全体を統括する責任者として乗務できる資格を取得した。これで、客室乗務員として働き続けるキャリアプランの構築に一定のメドがついた。

そこで勤務形態の見直しに踏み切った。乗務するのは国内線のみとし、勤務日数を従来の半分に削減。その分、給与も従来の半分程度になる。酒田市に引っ越して現地で副業を始めることを決めた。副業を用意したのはANAグループのANAあきんど(東京・中央)だ。