なぜブラックアウトを回避できなかったのか

読売社説は「深刻なのは、道内のほぼ全域が停電に見舞われたことだ」と指摘し、こう主張する。

「300を超える病院が停電した。災害拠点病院の多くは自家発電で対応したが、外来患者の受け付けを休止したところもある。長期化すれば、手術や人工透析などに影響が出て、生命に危険が及びかねない」
「非常用電源の燃料確保が極めて重要になる。病院などに優先的に供給したい。電力会社は電源車の派遣を急がねばならない」

読売社説の主張はその通りなのだが、この後、ブラックアウトという全域停電の原因について言及しながら原発再稼働を求めている。

「発電量と消費量のバランスが大きく崩れて、電気の周波数が急激に変動し、発電設備が損傷するのを防ぐためだ。広域的に電力供給が止まった今回の事態には、やむを得ない面もあった」

これは北海道電力に対してあまりに好意的ではないか。東日本大震災のときに東京電力はブラックアウトをうまく回避した。なぜ北海道電力にそれができなかったか。社説はそこを追及すべきではないか。

原発が再稼働していればすべてOKなのか

読売社説は続ける。

「問題は、道内の電力を苫東厚真火力に頼り過ぎていたことだ」
「東日本大震災後に停止された泊原子力発電所の3基が稼働すれば、供給力は200万キロ・ワットを超える。原発が稼働していないことで、電力の安定供給が疎かになっている現状を直視すべきだ」

何もここで原発再稼働を持ち出す必要性はない。これはすり替えの論理だ。大新聞の社説として納得しがたい書き方である。

仮に泊原発が稼働していたとして今回の地震の影響はまったくなかったと言い切れるだろうか。稼働していなかったことが、深刻な事故を防いだという可能性も考えられる。読売社説の思考回路は安易ではないだろうか。

(写真=時事通信フォト)
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