台風21号の被害を「想定外」にするな

新聞の社説も、災害の備えや対策について論じている。

9月6日付の朝日新聞の社説は台風21号の甚大な被害を取り上げ、「まずは被災者への支援と復旧である。同時に強風の恐ろしさを改めて認識したい。しっかりした造りの建物内で待機する。住宅などの一部が壊れて『凶器』と化さないよう、事前に対策を施す。そうした基本を徹底することが大切だ」と訴えている。

続けて朝日社説は関西空港の前例のない被害に触れる。

「94年の開港から地盤沈下が続き、04年の台風で浸水したため護岸のかさ上げ工事を続けてきた。それにもかかわらず第1滑走路に最大50センチ水がたまるなど、広範囲に冠水。沖合に停泊していたタンカーが流されて空港と対岸を結ぶ連絡橋に衝突したこともあり、『孤島』となった空港に3千人超の利用客が取り残された」

滑走路や駐機場に大きな水たまりができ、衝突したタンカーが高波に押し流され、連絡橋に食い込んでいった。

どうしてあのような事態に陥ったのか。原因の究明と、今後の対策が必要だ。

朝日社説は「空港の施設や運営についても、事前の想定と対策が十分だったか、幅広い検証が必要だ。『想定外』で終わらせてはならない」と訴えている。

「想定外にするな」との主張には大賛成である。ただし「想定外」は必ず起きる。今回の災害で、空港職員は復旧のため懸命に動いた。9月4日に冠水したが、7日には運用を一部再開している。こうした現場の対応は評価すべきだろう。

読売にこそ、総裁選延期を主張してほしかった

読売新聞は9月7日付で北海道の地震をテーマに大きな1本社説を掲載している。

その読売社説は冒頭で「電力や水道の供給が広範な地域で停止し、交通網が寸断された。自然災害に対するインフラの脆弱さが浮き彫りになったと言えよう」と書き、「被害の実態が不明な地域も少なくない。状況を把握し、救助を急がなければならない」と訴える。

「電力」「水道」「交通」といったインフラが破壊される。沙鴎一歩は7年前の東日本大震災を思い出した。あのときに国や東京電力が使ったのも「想定外」という言葉だ。この言葉は責任回避として使われることがある。われわれは「想定外」という説明には、注意深くならなければいけない。

続けて読売社説はこう訴える。

「自衛隊や警察、消防、海上保安庁が計2万人を超える態勢で救命・救助活動を進めている」
「政府は、首相官邸の危機管理センターに対策室を設置した。関係自治体と連携し、市民生活の復旧に全力を挙げてもらいたい」

こうした復旧が進むなか、9月7日に自民党総裁選が告示された。北海道地震のために3日間選挙活動を自粛し、10日から演説会や記者会見など本格的な論戦が始まった。

本来ならば総裁選は延期すべきだと思う。なぜ、この時期に強行するのか。

安倍晋三首相や自民党は自分たちの都合ばかり考えているようにみえる。首相官邸に災害対策室を設ければ、それで済むと思っているのだろうか。

読売は安倍政権を擁護する論調が強い。今回の社説でも、そのあたりをきちんと批判してほしかった。