冒頭で触れたギャラップ社のジム・クリフトン会長兼CEO(最高経営責任者)は、「上司の言ったことを、口答えせずに確実にやれば成功するというのが従来のやり方だった。このマインドセットを変えないといけない」と、警鐘を鳴らしています。

わたしの著書や講演がきっかけで、自分たちの仕事の在り方を問い直し、現状を打破することで、業績を回復させていく例もあれば、再び元の状態に戻ってしまうこともある。

この違いはどこにあるのか。また、どうすれば、「元のもくあみ」にならず、前に踏み出すことができるか。

そうした問題意識から、高知支店の成功例を、誰にとっても、どんなビジネスでも通用するように、きちんと整理して実行しやすい形として伝えたい――こう考えていました。同時に、会社組織を動かすのは論理ですが、論理で説明できないところに肝心ことがある。そこに少しでも踏み込みたい、と思いました。

日本企業に蔓延する3大疾病

大手企業の社員研修や、中小企業の経営者の集まりで、講演を依頼されることがありますが、毎回、参加者が大きな反応を示す話があります。

日本企業の多くが、アメリカ流の経営手法に過剰適応した結果、オーバー・プランニング(過剰計画)、オーバー・アナリシス(過剰分析)、オーバー・コンプライアンス(過剰法令順守)の“3大疾病”に陥っている。

いうまでもなく、企業の経営にとって、分析も、計画も、法令順守も必要不可欠です。ところが、いずれも成長を実現し健全な経営を行なうための手段であるはずなのに、それ自体が目的化し、形式化してしまう。これが問題です。

何かというとすぐに分析が始まり、「市場の状況はこうであり、競合他社はこういう状態にあり、したがって、わが社のとるべき最適なポジションは……」といった計画立案こそが自分たちの仕事だと思ってしまう。官僚的な仕事の進め方により、「分析マヒ症候群」に陥っているともいえます。

その具体的な症状は次のとおりです。

・本社の企画部門などから、短期的な収益を目的とした指示が次々と現場に下ろされる。
・現場では、ミドルリーダーが上からの指示を部下に伝え、部下はその指示をこなすことに追われる。ところが、指示の多くが現場の状況と乖離しているため、なかなか成果に結びつかない。
・同時に、細かなルールに縛られ、状況に応じた柔軟な対応がとれない。
・仕事がやらされ作業となり、現場は次第に疲弊し、部下のやる気が減退していく。