アメリカの調査会社によると、日本の会社員の「やる気」や「熱意」は世界最低クラスだという。提出する書類や会議の数は増えるばかり。社員は受け身状態になり、いわゆる「やらされ感」が蔓延し、現場は疲弊している……。そんな現場に「やる気」があふれるはずがない。どうすればいいのか。元キリンビール副社長の田村潤氏は、自身の経験から「現場が自立し、徹底して顧客に向き合うことで上層部に考えを変えてもらうことができる」と説く――。

※本稿は、田村潤『負けグセ社員たちを「戦う集団」に変えるたった1つの方法』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/YinYang)

熱意ある社員の割合は139カ国中132位

「日本は『熱意あふれる社員』の割合が6%しかない」
「139カ国中132位と最下位クラス」

(2017年5月26日付『日本経済新聞』)

この結果は、世論調査と人材コンサルティングを手掛ける米ギャラップ社が、世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)を調査したものです。

記事はほかにも、日本企業内に諸問題を生む「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は24%、「やる気のない社員」は70%に達したと続きます。

はたしてこの数字が日本企業の社員の実態だとしたら、これほど深刻なことはありません。これは能力の問題ではなく、意識の問題だからです。そしてその意識に大きな影響を与えているのが、職場風土や企業の体質にあるからです。

2016年、わたしはかつて赴任した高知支店での経験を基に描いた『キリンビール高知支店の奇跡』(講談社+α新書)を上梓しました。ビジネスパーソンから学生まで多くの方々に手に取っていただき、読者からのハガキもたくさん届きました。

その反面、全国で講演をする機会が多くなり、皆様のご意見を身近で聞くと、次のような声もありました。

命令と管理では誰も動かない現実

「田村さんの言うことは本当によくわかるし、わたしたちにもできるような気がしました。だけど、会社に帰るとやることがいっぱいあって、『元のもくあみ』になってしまうんです。どうすればいいでしょう」

つまり頭では理解できても、現実の世界に戻ると日常に埋没してしまうというのです。

また、経営者や営業部門のリーダーからは次のような悩みが多く聞かれます。

「社員に『負けグセ』が染みついている」
「現場の社員の士気が上がらず、社内で営業職を辞めたい人が増えている」
「一所懸命やっているが業績は下降するばかりで、突破口が見出せない」
「やることが増え、仕事がどんどんやりづらくなっている」

上からは達成できそうもない目標を掲げられ、いろいろな指示や施策が降りてくる。提出する書類や会議の数は増えるばかり。社員は受け身状態になり、いわゆる「やらされ感」が蔓延し、現場は疲弊している……。

わたしにはそのような現場の姿が、前記のギャラップ社の調査した数字に反映しているように思えるのです。