仕事や勉強のパフォーマンスを上げるにはどうすればいいのか。脳科学者の茂木健一郎さんは「やる気を出す必要はまったくない。『やる気が出ないから動けない』というのは脳が生み出した幻想にすぎない」という――。(第2回)

※本稿は、茂木健一郎『運動脳の鍛え方』(リベラル社)の一部を再編集したものです。

覚醒に関する比喩的なイラスト
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「やる気がない」は言い訳にすぎない

多くの人が誤解していることを述べておきたいと思います。

自分の限界を超えて新しいことにチャレンジするとき、こんなふうに考えることはありませんか?

「今度こそ、やる気を起こしてチャレンジしてみよう!」

一見すれば、何だかどんなことにもチャレンジできそうな気迫がひしひしと伝わってきます。多くの人にとって、自分の限界を超えてチャレンジするというと、いかに「やる気スイッチ」を入れるかが、大きな問題になりがちです。

ですが、脳科学者としての私の考えは、ちょっと意外なものかもしれません。自分の限界を超えて何か新しいことにチャレンジしようとするとき、実はこの「やる気」という特別な感情はまったく必要ないのです。

何を隠そう、私がこれまで自著やユーチューブなどで常々提唱しているのは、「やる気不要論」です。なぜなら、「やる気がなければ、自分を変えることができないし、何も始められない」と思っている人は、ほぼ例外なく、やる気がないということを何かを始められない言い訳にしている場合が多いからです。

これが、私たちの脳が勝手に限界をつくってしまう一つの要因でもあるのです。

大抵の場合、「やらない自分」「やれない自分」について、「いまはやる気が起こらない」、あるいは「やる気さえ手に入れたら、やるのに」と言い訳しがちです。これが自分に対する甘えにつながるのです。