コツは楽しむこと

脳の強化学習とは、ある行動をくり返して物事が上達していくこと。こうした脳の強化学習によって、「ドーパミンサイクル」が回り出します。

またうれしいことに、ドーパミンサイクルは、軌道に乗って調子が出てくると、あとは勝手に回ってくれる性質を持っています。そこで、まずはどんなことでもいいので、このドーパミンサイクルを1回転回すためのイメージトレーニングをしてみてください。その秘訣ひけつは、「チャレンジをいかに楽しめるかどうか」にかかっています。

皆さんも、ここで一度思い返してみてください。おそらく、実際にうまくいったチャレンジというのは、心から楽しんでやっていたのではないでしょうか。また、自分の限界を超えられる人、チャレンジ精神が旺盛な人というのは、たいていビジネスにおいても人生においても「それ自体」を楽しんでいる人が多いといえます。

実際に、私自身の経験からも、「これは新たな自分になるチャレンジなんだ」と緊張したり、身構えてしまうと、やはりうまくいかないことが多かった気がします。

私たちの脳というのは、頭のなかでさまざまな問題ばかり考えてしまう傾向があります。ときに、それがチャレンジする気持ちを妨げてしまうことすらあるのです。そこでまずは、チャレンジ意識を「楽しみながらやる」、その点に集中することから始めてみてください。

偏差値入試が生む弊害

ビジネスの世界では、しばしば結果がすべてと捉えられがちですが、私は結果だけがすべてとは思いません。

なぜなら、「結果を出すことがチャレンジなんだ」と捉えてしまえば、余計な雑念がチャレンジの阻害要因となり、結果的にうまくいかずドーパミンサイクルを回すことができないからです。ゆっくりでもいいので、確実に目の前の一つひとつ、達成感や喜びを積み重ねながらチャレンジすれば、ドーパミンサイクルがきっと回り出すはずです。

以前、ある意識調査で、「日本の若者は世界で最もチャレンジしない」ということを耳にしたことがあります。私はこの調査結果を聞いて、「若いうちにチャレンジができないなんてもったいないな」と思いました。なぜ、日本の若者がチャレンジできないのか。その原因の一つに、偏差値入試という問題があると私は考えています。

教室で勉強している中学生
写真=iStock.com/mapo
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若者に限らず、多くの日本人が学歴や企業ブランドといった、何かの“お墨付き”を求めていることは否めませんが、価値観が多様化し、かつAIが進化している現代においては、人間の能力にはさまざまな個性があるということを肝に銘じるべきです。

ところが、いま若者の大半は偏差値や学歴で将来が担保されると勘違いして、偏差値という偏った一つのモノサシによって、多様な個性を発揮するチャレンジを恐れてしまっているのです。だからこそ、日本人の若者は、いつの間にか誰かのお墨付きだけを追いかけることに夢中になってしまったのでしょう。