子どもの自主性を伸ばすにはどうすればいいのか。医学博士の柳澤綾子さんの書籍『自分で決められる子になる育て方ベスト』(サンマーク出版)より、子どものやる気についての解説をお届けする――。

好きだった「泥団子作り」をやらなくなった

「長女は一人で黙々と泥団子を作ることが好きなんです。先月、幼稚園でたまたま泥団子作りが流行はやったみたいで、先生がコンペティションを開いてくれて、長女に優勝の金メダルを渡してくれたんです。優勝した日はうれしそうにしていたんですけど、何日かしたらパタッと泥団子を作らなくなって、誰とも遊ばずにぼーっとしているようになってしまって……。なんて声をかけたらいいのでしょう……」

拒否をする子ども
写真=iStock.com/Umkehrer
好きだった「泥団子作り」をやらなくなった(※写真はイメージです)

子どものやる気が突然なくなってしまった。心配ですよね。

泥団子への情熱が、一気に冷めてしまったこのケース。何が起こっていたかというと、「外発的動機づけによって、内発的動機づけが潰されてしまった」のです。

「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」がある

やる気には「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の2種類があります(※1)

※1 Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2017). Self-determination theory: Basic psychological needs in motivation, development, and wellness. The Guilford Press.

・内発的動機づけ

「とにかく好き」「やりたい!」と思う強い動機づけ。自分が好きで、やりたいと思っているのですから、そこに理由はありません。

・外発的動機づけ

やること自体に何らかの報酬や理由がある動機づけ。褒めてもらえる、お小遣いがもらえる、欲しいおもちゃを買ってもらえるなど、いい成績を取ったときに得られる「ご褒美」を期待して、やる気を出しています。

今回のケースでは、もともと長女は泥団子を作ること自体が楽しくて仕方ありませんでした。これこそが「内発的動機づけ」だったのです。

しかし、幼稚園で泥団子作りが流行り、コンペティションが開催されてしまいます。

ずっと泥団子を作ってきた長女は、誰よりも技術を持っています。そのため金メダルをもらえたのですが、ここで自分が泥団子を作ってきた目的が、「好きだから(内発的動機づけ)」だったのか、「金メダルが欲しいから(外発的動機づけ)」だったのかがわからなくなってしまいました。