日本もますます難しい局面に
前述のカール氏は会見で、ロシアの目標を以下のように指摘しています。「(ロシアの手で)アメリカ国民が政府や政治制度に対して不満を持つように仕向けること。アメリカを欧州連合(EU)をはじめとする世界の同盟国から分離すること。第2次大戦後につくられたパックス・アメリカーナの国際的規範を損なわせ、逆にロシアの影響圏を拡大していくこと」。カール氏によると、こうしたロシアの狙いは現在、全て成功しており、これこそ、ロシアがトランプ政権を操っている証拠だと言うのです。
この話を聞いた当初、私は「元CIA諜報員がこんなことを公の場で発言するとは。低次元な陰謀論の類いではないのか」と疑いました。しかし、今となっては、そのように切り捨てることは誰にもできないでしょう。
カール氏の言う「第2次大戦後のパックス・アメリカーナの国際的規範」などは、既にオバマ民主党政権の時から損なわれていますが、トランプ政権下でさらに損なわれる可能性も考えておかねばなりません。日本の安全保障もますます、難しい局面に入っています。
著作家
1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。おもな著書に、『世界一おもしろい世界史の授業』(KADOKAWA)、『経済を読み解くための宗教史』(KADOKAWA)、『世界史は99%、経済でつくられる』(育鵬社)、『「民族」で読み解く世界史』(日本実業出版社)などがある。