今年は農家の1億円プレーヤーが誕生する

それだけでなく、農作物に付けるバーコードには農家や作物の情報が入っています。消費者はスマホで野菜や果物をつくった人の動画を見ることができます。お気に入り登録しておけば農家から農作物の育成具合や「明日、トマトが最寄りの『農家の直売所』に入ります」といった情報が届きます。バーコードを介して農家のファンづくりもできるのです。

出荷した青果物が売れると、農家に60~65%が入り、残りの35~40%をスーパーと当社で分けます。この仕組みで儲かる農家が増えています。一番稼いでいる農家の年間売上は8000万円近い。今年は1億円プレーヤーが誕生するのではないでしょうか。本来、農業は儲かるのです。

及川智正社長の講演会の様子

今、日本で流通する農産物、水産物を合わせると末端の金額で100兆円と言われています。その1%にあたる1兆円を、当社で扱うのが私の夢です。

人から「たった9年で上場してすごいですね」と言われることがあります。成功の秘訣を振り返ると、農業への情熱とお金がなかったことの2つだと思うのです。資金が乏しかったから在庫も持たないし、ITも流通も外注する「持たない経営」を実現できました。創業のときベンチャーキャピタルから潤沢な資金を得ていたら失敗していたかもしれません。

マイナスは必ずしも悪いわけではないし、プラスが決して良いわけではありません。そこを理解することが、経営する者として一番大切だと思います。

及川智正(おいかわ・ともまさ)
農業総合研究所 社長
1975年生まれ。1997年東京農業大学農学部卒業、巴商会入社。和歌山県での就農経験などを経て、2007年農業総合研究所を設立し、現職。2016年農業ベンチャーとして初の東証マザーズ上場を果たす。
(構成=Top Communication 撮影=向井 渉)
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