「あいつに預ければ高く売ってくれるらしい」

農家も私には世話になっていることは感じていて、「50箱持って行っていいよ」と言ってくれました。和歌山の駅前でゴザを敷き、みかんを一盛り300円で売りました。そのうち農家の間で、「あいつに預ければ高く売ってくれるらしい」とウワサが広まり、農作物を持ってくるようになったのです。私が欲しいのは現金でしたが(笑)。

これは和歌山ではなく東京や大阪で売ったらもっと売れる。そう考えて始めたのが「農家の直売所」です。最初はトラックの運転から何から自分一人でやっていました。

ターニングポイントは3年目。「和歌山で面白いことをやっているやつがいる」と新聞やテレビ、ネットの取材を受けるようになりました。と同時に、「自分も日本の農業を変革したい」という頼もしく優秀な仲間が集まってきました。そこから成長が加速し、創業9年目の上場まで一気にたどり着いたのです。

「農家の直売所」の売り場の例(画像提供=農業総合研究所)

ITを駆使して農家と消費者を直接結ぶ

東証マザーズでは、農業総合研究所の銘柄は卸売業に分類されています。ただし、在庫を持たない日本で唯一の卸売業です。農家の「委託販売プラットフォーム」が事業の形態です。ITを駆使して農家と消費者を直接結んでいます。

農家は芽室から石垣島まで全国72カ所の集荷場へ出荷します。その際、好きなスーパーを選べますし、好きな農作物を出荷でき、好きな価格を付けることができます。農家は携帯やタブレットで店舗情報や売り場情報を知ることができます。

店舗に行かなくても、店舗の規模がわかりますし、売り場で自分が出荷した農作物がどのくらい売れているか、他の農家はいくらで売っているかなどがわかります。そしてそれらの情報を翌日の出荷に活かせるのです。