社員を昇進させる時の3つのポイント

──同じ営業成績を残した2人のライバルがいたとして、どちらか1人を昇進させる場合、どういう基準で考えますか。

大きく3つあります。1つはより多くの失敗体験をしている社員。たとえば、同じ10勝でも、10戦10勝よりも、20戦10勝したほうの社員を評価する。いま勝てている方法が、1年後も通用するのかはわからない。ならばナレッジ(経験、情報)があるほうが対応できると考えるからです。

2つめは、個人で10勝より、チームで10勝しているほう。営業は個人成績だけが反映されがちだが、大きな案件になればなるほどチームでの仕事が増える。ならば、営業でもチーム全体での成績が重要になります。

3つめは、自分なりに仮説を立て、それを実行するまでやり遂げる人。なんとなく営業をしていたら運で成績がよかった、というよりは自分なりの仮説と戦略を立ててそれを実行してみた、という人を評価します。不確定の未来においては仮説を立てる力と実行し切る力が必要です。

──自分を育ててくれたと感じる先輩はいますか。

大学時代の指導教官の故・渡邉貴介氏(元東京工業大学教授)。先生は単に座学の研究をするのではなく、自ら立てたテーマが事実を反映しているかについてこだわりが強い。都市開発をテーマにしていたが、実際に現場に足を運び、土木建設企業の当事者の声にも耳を傾けていました。

私が理系大学出身にもかかわらず、営業職を志望して入社したのは渡邉先生の影響によるところが大きい。

そうした経験もあり、私はすぐに現場を確認し、状況を見極める社員を求めます。福島第一原発事故や、16年の埼玉県新座市の送電線火災事故のような際でも、すぐに現場を確認できるような人であってほしいです。また、エコキュート(ヒートポンプ式電気給湯器)事業でも、単に利用者にアンケートをとるのではなく、実際に家庭に赴き、生の声に耳を傾ける。アンケートでは出てこない声がそこにはあるのです。

▼QUESTION
1 生年月日、出生地

1963年6月29日、千葉県柏市
2 出身高校、出身大学学部
神奈川県立多摩高校、東京工業大学工学部
3 座右の銘
為せば成る
4 座右の書
『代表的日本人』内村鑑三 著、鈴木範久 翻訳
5 尊敬する人
上杉鷹山
6 私の健康法
毎朝ドリンクタイプのヨーグルトを飲む
小早川智明(こばやかわ・ともあき)
東京電力ホールディングス 社長
1988年、東京電力入社。常務執行役カスタマーサービス・カンパニー・プレジデント、東京電力エナジーパートナー社長などを経て2017年より現職。子会社時代は大口顧客向けの営業を積極的に推進し、ソフトバンクや日本瓦斯など異業種との提携を進めた。川崎市出身。
(構成=鈴木俊之 撮影=横溝浩孝)
関連記事
40代以上の男性社員は固定観念を捨てよ
巨大地震 無理に帰宅する社員は間違いか
東京海上HD社長「社員が必ず伸びる3K」
トヨタ式の"カイゼン"に潜む3つの大誤解
会社が絶対手放さない、優秀人材6タイプ