2021年度業績の通期見通しが出せない異例の事態
「新型コロナ感染拡大や年末年始の電力ひっ迫などもあり2021年度通期見通しは出せません」――。
2月10日の東京電力ホールディングス(HD)の決算会見で大槻陸夫常務執行役からこんな言葉が飛び出した。大槻常務執行役は言葉少なげに語ったが、年度末を3月に控えるのにも関わらず、業績の見通しが出せない異例の事態だ。
単年度の決算見通しが出せない中では、当然、中期経営計画も策定できるわけがない。3月末に3カ年の「第三次特別総合計画」が終わる。同計画は東電HDの過半の株式を握る政府と策定するが、後手後手の新型コロナウイルス感染症対応に追われる菅政権にとって東電HDの問題は「票につながるわけでもなく、逆に対応を誤れば支持率がさらに下がりかねない」(自民党中堅幹部)として、後回しになっているのが実情だ。
東電HDも菅政権発足当初は政府に期待を寄せていた。菅首相が所信表明演説で「2050年をめどに温暖化効果ガスの実質排出ゼロ」を宣言したことによって、二酸化炭素を排出しない原子力発電所の再稼働に弾みがつくとの情報が業界に広がったためだ。
実際、昨年10月末には東電HDの福島第一原発の処理水の放出について政府がゴーサインを出すとの話が駆け巡った。しかし、報道が先行したため、地元の漁業組合などが反対、話は流れてしまった。