頼みの綱「JERA」の経営を直撃したLNGの弱点
期間収益の低迷に加え、自由化で分社した各社も振るわない。特に東電HDが不安視するのが燃料調達・火力発電部門を切り出し、中部電力と共同で設立した燃料・火力発電会社のJERAだ。
JERAは日本の発電量の約3割を占めるのと同時に、世界最大規模の液化天然ガス(LNG)の調達会社でもある。設立当初は、その発電量とLNGの規模が「強み」だったが、これからの脱炭素時代では「弱み」になる恐れがある。
LNGは化石燃料であるため、いずれ規制の対象となる。さらに、気化しやすいため2カ月しか貯蔵できず、価格変動のリスクを抱えている。この年末年始はまさにこのLNGのリスクがJERAの経営を直撃した。年末年始に日本を襲った寒波で急激に電力需要が高まり、LNGの在庫不足から必要な電力が賄えなくなったのだ。
いち早く経済回復した中国や脱石炭を急ぐ韓国とのLNGの争奪戦となり、歴史的高値での購入を余儀なくされたので、今期の決算も東電HDの期待に沿うようなものにはならない模様だ。
廃炉・賠償・除染に必要な資金は約16兆円
JERAの動向は東電HDの再建にも大きな影響を与える。
東電HDはJERAを将来的に上場させ、その上場益を廃炉や賠償、除染など東電HDが抱える負債の返済原資や、国有化から脱却するために国がもつ東電株を買い取る資金として見込んでいるからだ。
現在、東電HDに課されている廃炉・賠償・除染に必要な資金は約16兆円。内訳は、廃炉費用が8兆円、被災者への損害賠償費用4兆円、除染費用4兆円だ。
廃炉費用の8兆円は全額東電HDが支払う。被災者への損害賠償費用は7.9兆円だが、この半分の4兆円を東電が負担し、残る半分はほかの電力大手の負担金などで賄う。この12兆円を東電は、毎年5000億円前後を30年程度払い続ける。この負債返済を進めると同時に、国が持つ東電株を買い戻すにはJERAなど子会社の上場益や取り込み利益などが必要になる。