原子力規制委員会の更田豊志委員長が呈した苦言

昨年12月21日の臨時会合で、原子力規制委員会の更田豊志委員長は、東電の小早川智明社長に向けてこう苦言を呈した。

夜の港
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「あたかも政府の問題になったような態度は許されない」
「社長の顔が見えない」

これに対し、小早川社長は「さまざまな調整箇所がある、我々の立場で乗り越えられないものもある」と理解を求めたが、更田委員長は「福島でトップの顔が見えない組織が柏崎刈羽原発で何かあったときに顔を見せるとは思えない」「しっかりリーダーシップをとってほしい」とさらに苦言を呈した。

確かに、処理水を海洋などに放出する決定を下す権限は政府にある。しかし、東電にできることもある。年間の収益見通しを打ち出したり、菅政権の掲げる「2050年排出ガスゼロ」に向けた取り組みを進めたりすることは可能だ。

ところが、福島第1原発の処理水の問題など、廃炉や除染など後ろ向きの対応に追われた。

完全自由化された電力小売市場での苦戦が鮮明

東電HDを巡る経営環境は厳しさを増している。

新型コロナウイルスの感染拡大による電力需要の落ち込みに加え、完全自由化された電力小売市場での苦戦が続いている。

各地の新電力のシェア(2020年6月時点)は、東京=23.1%、関西=20.9%、北海道=20.3%、東北=13.9%、中国=13.6%、四国=13.3%、北陸=12.8%、九州=12.5%、中部=12.3%、沖縄=8.3%。東電管内での新電力のシェアは23.1%と全国で最も高い。

東日本大震災前に約2000万件あった東電の家庭向け契約件数は、直近では1300万~1400万件にまで落ちた。結果として東電の電力小売りを担う「東電エナジーパートナー」の昨年4~12月期の経常利益は、前年同期比で85%も減少した。