そうしたフルサービスの喫茶店の潮流を変えたのが、1980年に開業したドトールコーヒーショップだった。当時コーヒー1杯が平均300円の時代に、半額の150円で提供。代わりに、自分で商品を運ぶセルフサービスの業態(開業時は立ち飲み)とした。時代の風にも乗り、80年代後半から店舗は急拡大。1996年にスターバックスが日本に上陸して、2000年頃に「シアトル系カフェの時代」を迎えるまで、ドトールの独壇場が続いた。
競合の追随を経て「本気」に転換
正確には、「セルフカフェ」業態のさきがけはドトールではなく、1955年頃から始めた「ミカドコーヒー」(立ち飲み式で、1杯60円の時代に30円で提供)が四半世紀も早い。だがセルフカフェは、ドトールによって進化したのも事実だ。同じセルフカフェのスタバも、ドトールが築いた下地があったからこそ、日本の消費者になじんだ一面がある。
ただし、そんなドトールも、新業態では業界を牽引する役割を果たせなかった。業態として「エクセルシオールカフェ」(セルフカフェ。1999年開業)や「星乃珈琲店」(フルサービス)を開発して人気店に育てたが、それぞれスターバックスコーヒー、コメダ珈琲店の二番煎じにすぎない。
現在は両業態とも独自性を打ち出しているが、エクセルシオールの開業時にはロゴの色づかいがスタバと似ており、星乃の開業時にはコメダの看板商品「シロノワール」を意識した「ホシノワール」という商品があった。筆者は創業者の鳥羽氏にも何度か取材して、その見識に敬意を示しており、日本の喫茶業初の東証一部上場企業として、ドトールには期待している。だからこそ、当時の取り組みは残念に感じた。
「神乃珈琲」はそうした流れを断ち切り、独自性を打ち出している。先日こんな声も聞いた。
「銀座に行ったついでに『神乃珈琲』を利用した。コーヒーの味がよく、和風の高級感ある雰囲気もよかった。個人的には競合の『椿屋珈琲店』(東和フードサービス)よりも高品質に感じた」(中小チェーン店の取締役)