ドトールコーヒーが超高級喫茶店「神乃珈琲」を増やしている。今年5月には、京都に新店舗を出した。店舗によってはブレンドコーヒーの価格が1杯1000円を超える。コンビニでは1杯100円でコーヒーが買える時代に、なぜドトールは高級路線をとるのか。『日本カフェ興亡記』などの著書を持つ経済ジャーナリストの高井尚之氏が分析する――。
京都にオープンした「神乃珈琲」外観(画像提供=ドトールコーヒー)

最高級業態「神乃珈琲」を京都に出店

5月23日、京都の繁華街に「神乃珈琲」(かんのコーヒー)という喫茶店がオープンした。大丸京都店に隣接しており、京都市営地下鉄烏丸線・四条駅から徒歩数分だ。阪急電鉄・烏丸駅からもほぼ同じ距離で、京都屈指の繁華街に位置する。

繁華街とはいえ、そこは古都。一歩裏手に入ると昭和の風情も残る。それを意識して店の外観は周辺の景観に溶け込むように作られており、入り口には縦の格子がついている。看板になっているロゴの「神乃珈琲」は、老舗企業の社印のようなデザインだ。セルフカフェではなく、店員が注文を取りに来て飲食も運んでくれる「フルサービス」(と喫茶業界で呼ぶ業態)だ。

実はこの店、ドトールコーヒーが手がけている。2016年9月に東京・目黒通り沿いに「Factory&Labo 神乃珈琲(学芸大学店)」を開業。翌2017年12月、中央区銀座5丁目の商業ビルに「神乃珈琲 銀座店」がオープンした。学芸大学の店は焙煎工場にカフェスペースを設け、銀座の店は“究極の日本の喫茶”として、2種類のブレンドコーヒーを各1026円で提供する。今回の「神乃珈琲 京都店」は、関西初進出となる。

京都の店は、銀座よりも少し価格を抑えたが、それでもグアテマラ産ゲイシャ種を使用した「陽煎(HI-IRI)」、エルサルバドル産ティピカ種を用いた「月煎(TSUKI-IRI)」のブレンドコーヒーが各756円だ。現在人気の品種「ゲイシャ」も取り入れ、コーヒーシュガーの代わりに和三盆(古来からある上質な砂糖)を添えて、高級な和風を打ち出した。

フードメニューもサンドイッチなど昭和的な定番品が目立ち、「だし巻きたまごサンド」も目を引く。女性客を意識してか、一口サイズで食べられるように工夫してある。

ドトール随一の「コーヒー通」のこだわり

「神乃珈琲は、ドトール・日レスホールディングスが手がけたカフェの歴史において、こだわりの集大成となる業態です。店のコンセプトとして、(1)直接仕入、(2)直火焙煎、(3)抽出へのこだわり、(4)品格ある味わい、(5)上質な空間、の5つを掲げました」

こう話すのは、菅野(かんの)眞博氏だ。神乃珈琲の運営会社であるプレミアムコーヒー&ティー社長であり、ドトールコーヒー常務取締役・新規事業統括本部統括本部長を兼任している。