BEFORE:自衛隊 AFTER:路面電車運転士
転身年齢:55歳 緒方成春(おがた・しげはる)さん
子供のころの夢を、定年後に実現
緒方成春さん(57歳)の経歴も、負けず劣らず異色だ。
陸上自衛隊を満54歳の定年まで勤め上げた後、現在は熊本市交通局で、路面電車の運転士として働く。熊本城をぐるりと囲むように、市街地を走る市民の足であるとともに、低床電車のレトロな雰囲気が観光客にも人気だ。
「自衛隊員はみな退職の1年前くらいに仕事を斡旋されるんです。ガードマンだったり、幼稚園のバスの運転手や、地元メーカーの仕事など。私も用意されている仕事だけではなく、幅広い職業を視野に入れていました。そうしたら、たまたま妻が『運転士募集』の新聞広告を見つけて。子供のころの夢を思い出したんです」
緒方さんは、1961年、熊本市生まれ。子供のころといえば、64年の東海道新幹線開業に伴う空前の鉄道ブーム。緒方さんも新幹線やブルートレインが好きだったが、自衛官だった父の影響もあって、高校卒業とともに陸上自衛隊に入隊した。
定年後、地元熊本の路面電車の運転士の採用試験を受験。適性検査、面接を通過し、運転士として採用された。その後、8カ月の研修に。熊本市の路面電車は「運転士の感覚で止める」。道に不慣れな自動車や、歩き回る歩行者を見ながら、手動で運転をするため、高い技術が求められる。自衛隊で大型車両などの操縦経験がある緒方さんも、「やはり町中で、お客さまを乗せての運転には緊張感があります」。