定年後、「孤立した迷惑老人」となる人には共通点がある。心理カウンセラーの下園壮太氏は、「環境の変化でネガティブな感情もわいてくる。それをケアするスキルは、50代のうちから身につけたほうがいい」という——。
※本稿は、下園壮太『50代から心を整える技術』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
50代の過ごし方次第で定年後は二極化する
50代という時期を迎えると、今までとは何か違う、先細り感や疲れ、うっすらとした不安を感じていらっしゃるのかもしれません。
仕事は相変わらず忙しく、疲労がなかなか抜けなくなった。かつては趣味にしていたことが、体力的にしんどくなってきた。人づきあいもおっくうに感じる。新たな趣味を、と思っても、寝食忘れて打ち込みたいものもないし、そもそも自分が何を好きなのかよくわからなくなってきた——
50代は、体力、気力、脳力が衰えてくる、老いの入り口です。自分の仕事や立ち位置にも先が見えてきて、定年も視野に入ってきます。何らかの「定年に向けた備え」をしたほうがいいとは思うものの、疲れが蓄積しているとフットワーク軽く動く気にもなれません。
しかし、実は50代は、大切なターニングポイントなのです。実際、私は定年を迎えた人が、その大きな変化の時を「うまく乗り越え、充実した日々を歩んでいる人」、あるいは「うまく乗り越えられず、迷惑老人や孤立老人になっていく」という二極に大きく分かれる現実を見てきました。カギとなるのは、できるだけ早く、できれば50代のうちに、定年後の環境変化に向けたメンタルの心構えを始められるかどうか、です。