岡さんによれば「プロの怪獣造型師は全国でも20~30人しかいない」という。粘土で怪獣の原型をつくり、自ら型を取り、複製して展示会やインターネットで販売する。複製はガレージキットと呼ばれ、少数生産だが、繊細で緻密なクオリティの高い商品として、高額で売買される。洗浄、組み立て、彩色などは購入者が行う。たとえば写真のガメラは、およそ7万円(イベント限定品)で販売されている。

「家のローンが終わって、3人の子供たちも独立しました。月々に必要な額が圧倒的に減って、食べていけるだけ稼げればいい」というところまで絞り込んでの転職だった。

「魂を込めないと、人を感動させるものはつくれません」

独立1年目は試走期間と割り切り、失業保険をもらいながら開業準備を進め、2年目で起業。年2回のワンダーフェスティバルを軸にスケジュールを立てる。事業計画書をつくって補助金の申請を行ったり、時には円谷プロダクションやKADOKAWAとキャラクターの版権契約を行うなど、だんだんと事業のめどが立っていった。

「造型師には職人肌の人が多くて、書類作成などは苦手にしている人もいます。私は長年会社勤めをしていたので、計画を立てたり、コミュニケーションも取れる。それは強みだと思います」

ただ、職人としてのこだわりは本物だ。「魂を込めないと、人を感動させるものはつくれません」。

独立して3年目。最近では、上尾市の公共施設で子供たちに模型づくりを教えたり、大人向けの造型教室の講師を始めた。造型物の売り上げだけでなく、講師業でも安定した収入を得たいと考えている。

「収入面では、大逆転とまではまだ言えません。売れる売れないで収入には波がありますしね。でも、十分食べてはいけますし、作品が評価されると、とにかく嬉しい。人に教えていると社会に貢献していると心から思えます」