BEFORE:パチンコ機器メーカー AFTER:怪獣造型師
転身年齢:54歳 岡 健之(おか・たけし)さん
つくった作品をプロに見せたら、「君、才能あるね」
埼玉県上尾市、自然学習館の工作室。木工机の上には、ゴジラやガメラ、ウルトラ怪獣の精巧なフィギュアが立ち並んでいた。怪獣たちの隙間から、生みの親である「造型工房キトラ」造型師の岡健之さん(57歳)が顔を出す。
福島県矢吹町生まれで、高校卒業とともに上京。横浜のメーカー工場、ソフトウエアメーカー勤務を経て、「当時、ものすごく儲かっていた」パチンコ機器メーカーに転職、開発に携わった。
22年勤め、開発の管理職についていた54歳のときに独立。パチンコ機器メーカーから怪獣造型師という、異色のキャリアを描くことに。
「40歳のとき、趣味で怪獣づくりを始めたんです。きっかけは、子供の夏休みの宿題。ゴジラの頭を粘土でつくったんです。本当は、子供がつくったことにして持たせるはずが、もともとゴジラ世代の私が頑張りすぎて、あまりに精巧なものをつくってしまった。父は時計職人、母が洋裁の先生だったこともあって、手先の器用さには自信があったんですよね。『子供のつくったものとは思えない』ということで妻に却下されました」。そう言って笑う。
あまりに出来がよかったため、プロの造型師に見てもらった。「君、才能あるね」。その答えに「調子に乗っちゃいました」。
『めざせ造型師』というブログを立ち上げ、本業の傍ら、創作にのめり込んでいく。幕張メッセで開催される日本最大の模型の展示会「ワンダーフェスティバル」に参加。次第にファンがつき、ブログの閲覧者も増えた。作品への評価も高まって、造型した怪獣のキットが売れるようになっていった。気づけば仕事以外の時間はすべて造型に使っていた。