アクティブユーザー数は、利用頻度の高いユーザーを指す。経営側の視点で顧客の数を増やそうとするのではなく、1人の顧客にアクティブユーザーになってもらい、ライフタイムバリューを高めるにはどうしたらいいかを考えて、戦略を打つ。あくまでも顧客目線が起点になる収益モデルなのだ。

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レジなしコンビニ「アマゾン・ゴー」でも、一般企業との発想の差を感じた。日本のスーパーでも「セルフレジ」が増えているが、レジカウンターが無人で、客が自ら会計するシステムである。これはつまり、店舗側のオペレーションの負荷や人件費削減を目的としたものだ。

一方、「アマゾン・ゴー」が自動化を進める目的は、「客を待たせない」ことであり、会計作業自体をなくしている。出入り口のセンサーとネット決済を組み合わせることで、客が店を出るときに自動で支払いが済むようになっている。このような顧客起点の発想を持てる企業は、決して多くない。

真っ向勝負を挑める、唯一の企業とは?

脅威のアマゾンに対して、対抗できる企業はあるのか。アメリカで言えば、最大のスーパーマーケットチェーンである、ウォルマートだろう。

エンジニアを多く抱えるアマゾンに対抗するため、有力なITスタートアップ企業の「ジェット・ドット・コム」を買収した。18年2月には、それまでの会社名「ウォルマート・ストアーズ」から「ストアーズ」を削除。ネット通販部門の拡大を印象づけることが狙いで、これまでの店舗中心のビジネスから脱却しようとする、強い覚悟を感じた。物流の自前化にも取り組んでおり、17年からは注文を受けた店舗の従業員が直接宅配する実験も始めた。ネットとリアルの融合の重要性に気づき、真っ向勝負を挑める唯一の企業と言えよう。

日本の場合はどうか。私が考えるアマゾンに対抗できる条件は、「商品力が強い企業」「自前でシステムを構築でき、状況の変化に対応できる企業」「過去を否定して、デジタル化に舵を切れるトップがいる企業」である。

これらの条件に当てはまる企業はユニクロを展開するファーストリテイリングを筆頭に、ニトリ、楽天、大創産業(ダイソー)などが思い浮かぶ。