失敗に対する異常な許容度の高さ

このように戦略的に異なる視点からイノベーションを起こす能力があるため、アマゾンの次の一手を読むのは難しく、多くの競合他社は後塵を拝するほかないのだ。自社の事業のなかでこれほど多くの実験を同時並行で進める能力は過去に例を見ない。また、イノベーションに取り組む際の失敗に対する許容度の高さも並外れている。ベゾスは「失敗する場を探しているならアマゾンに限る」とまで言い切る。

ダグ・スティーブンス・著、斎藤栄一郎・訳『小売再生 リアル店舗はメディアになる』(プレジデント社)

従来の小売業界の経営者たちにしてみれば、小売事業を営むうえで逃げようのない現実が山積している。ところが、消費者生活のすべての面で大動脈になるという目的を掲げて爆走しているアマゾンにしてみれば、それは単にハイウェイの路面にある速度規制用の凸凹程度のものであって、問題にもならないのだ。アマゾンは時代錯誤のルールにすがるのではなく、小売という産業自体をつくり直すことに余念がないように見える。

メーシーズのランドグレンは、アマゾンが近いうちに難題を抱え込むと予想していたが、アマゾンを侮ってはいけない。ちなみに、ランドグレンは売り上げ不振を理由に2016年6月にメーシーズCEOの座を追われ、ベゾスはその1カ月後に世界大富豪ランキングで第3位に躍り出た。アマゾンばかりが目立っているが、現にグローバルな電子商取引で桁違いの成長を遂げているプレイヤーはほかにいないのが現実なのだ。

ダグ・スティーブンス(Doug Stephens)
小売コンサルタント
世界的に知られる小売コンサルタント。リテール・プロフェット社の創業社長。人口動態、テクノロジー、経済、消費者動向、メディアなどにおけるメガトレンドを踏まえた未来予測は、ウォルマート、グーグル、セールスフォース、ジョンソン&ジョンソン、ホームデポ、ディズニー、BMW、インテルなどのグローバルブランドに影響を与えている。著書に『小売再生』(プレジデント社)、The Retail Revival:Re-Imagining Business for the New Age of Consumerism(未訳)がある。
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