大学にとっての、採用選考活動のコスト・ベネフイット分析
前段で「大学はすでに就職予備校である」と書いた。入学者数の減少は、大学経営にあたっては、極めて深刻な問題である。学生数が減少すれば、主要な収入源である授業料収入が圧縮されるからである。
学生確保のために、多くの大学が注目するのが、魅力的な教育プログラムの提供よりも卒業生であるタレントやスポーツ選手を大々的に取り上げる広報活動や就職率の向上なのである。
京都には数多くの大学があり、京都地下鉄には驚くほど多くの大学の中づり広告がある。その中には、学生のTOEIC得点の向上や高い就職率を誇るものも少なくない。「私たちの大学に入れば、就職には苦労しない」ことを大々的に宣伝しているのだ。
大学事務組織の中に就職支援課やキャリアセンターを置き、数多くの職員が配置されている。これらの部署では、求人情報の提供、就職ガイダンス、業界説明会、インターンシップ・プログラムの紹介と斡旋、就職相談等、至れり尽くせりのサービスを学生に提供している。しかも、就職関連のイベントの多くが、授業時間内で実施されている。
企業は「指針」で「正常な学校教育と学習環境の確保」を謳っているが、大学自らが教育を軽視しているのが現状なのだ。多くの大学が、教育よりも学生の就職にウエイトをおき始めているのである。しかし、多額の費用をかけても、大学には学生定員があるので、無尽蔵に学生数は増えない。就職支援に関する多額のコストをかけても、それを上回るリターンは得られない。