企業は地球環境に配慮する必要はないのだろうか。環境経営の国際規格である「ISO14000」の認証企業が2009年をピークに減少しつつある。つまり環境経営を放棄する企業が急増しているのだ。なぜなのか。同志社大学大学院の加登豊教授は「環境経営を無駄なコストとみなす企業が増えているのだろう。だが環境経営は単なるコストではない。短視眼的な対応は企業価値を毀損する」と指摘する――。

2009年をピークに減少を続ける認証件数

今回の一穴:かつて環境経営の認証を取得していたが、その更新を放棄した

ISO14000(環境マネジメントシステム)は、1996年に発効した。2009年には、わが国の取得企業数は3万9566社となり世界のトップとなった。しかし、その後20年余りが経過したが、不思議なことが起こっている。ISO(国際標準化機構)の調査(世界全体の認証評価機関の認証評価件数)によれば、図表1のように、2017年には、認証件数が減少しているのである。

公益財団法人日本適合性認定協会のデータ(2018年11月14日現在)によれば、わが国の認証評価機関で認証を取得している取得企業数は、1万7572社であり、その数は2009年をピークに減少に転じ、2014年にいったん増加したが、その後減少を続けている。事業所ごと、工場ごとの認証を、企業全体としての認証に切り替えた企業がたくさん存在するが、それが、これほどの減少の主な原因であるとは思えない。わが国企業の環境マネジメントに関する意識が希薄になっているとは思われない。それでは、この減少は何を意味しているのであろうか。