経団連の所属企業はそもそもルールを守るつもりがない
日本経済団体連合会(以下、経団連)は、10月9日、「採用選考に関する指針」(いわゆる「就活ルール」)を廃止することを発表した。この思考の背後には何があるのだろうか。
現行ルールでは、3年生の3月(学校は春休暇中)に就職説明会が始まり、4年生の6月(学期の真っ最中)から採用選考を解禁することになっている。廃止決定を説明した中西宏明会長(日立製作所会長)は会見で、「ルールを作って徹底させることは、経団連の役割ではない。強制力も持っていない」と述べている。この発言にあぜんとしたのは、果たして、私だけなのだろうか。
経団連は、東証1部上場企業を中心に、日本を代表する企業が加盟する三大経済団体(他の二つは日本商工会議所、経済同友会)の一つである。その社会への影響力は大きい。経済対策だけに止まらず、わが国の政策に多大の影響を有している。日本の最盛期には、「日本株式会社」という言葉が存在したように、官民一体となった国家運営の一翼を担って来た団体であり、その行動や発言は決して軽々に扱ってはいけない。
80%以上の企業が「ルール破り」を堂々と回答
それにも関わらず、学生への配慮について一言も語らず、自らが設定したルールを加盟企業に順守を求めない、強制力はないとは、本当に驚きに発言である。事実、経団連が実施したアンケート調査では、「指針」を守っていないと回答した企業は80%を超えている。加盟している経済団体の定めたルールに反した行動をとっていると堂々と回答する企業にも驚きを覚える。
加盟企業の一部が、「優秀な学生」(何を持って優秀とするのかについては後述する)を確保するため、躊躇なくルール破りを敢行した。そして、大部分の企業がそれに追随したのである。悪しき「横並び意識」である。そのような状況を生んだのは、ルールは守らなくても良いとする空気感(みんなで渡れば怖くない)が支配していたからであろう。
ルールを守る気はないが、ルールは存在するのだから、守っているふりをする。具体的には、抜け道をあらかじめ準備してルール作りをしたり、ルールが守れない時に隠蔽したり、データの改竄を行ったりする。このような企業行動のあらゆるところに存在する。実は、それこそが、大きな問題なのである。