仕事に「アート思考」や「デザイン思考」を取り入れるためには、何が必要か。アートディレクターの山﨑晴太郎さんは「ビジネスにうまく取り入れるには、新しい価値観が受け入れる『余白』が不可欠だ。日本企業にはそれがないために、本来持っている意味よりも縮小され、限定的に使われてしまっている」という――。
※本稿は、山﨑晴太郎『余白思考』(日経BP)の一部を再編集したものです。
ロジカルシンキングから脱却するための思考法
「アート思考」や「デザイン思考」という言葉を聞いたことがある方は、少なくないと思います。
アート思考とは端的にいうと、芸術家(アーティスト)の思考のこと。自分自身の経験や興味関心に基づき、非連続なコンセプトを導き出す思考方法です。
そしてデザイン思考とは、デザイナーやクリエイターの思考プロセスを活用した手法で「人間中心思考」とも呼ばれ、他者視点で解決策を考えるものといわれています。商品やサービスを使うユーザーの視点から考える手法です。
アート思考とデザイン思考では、思考フレーム(当てはめる対象)や実践方法は違いますが、どちらも、マインドセットは共通しています。それは、ロジカルシンキングという「枠」からの脱却です。
「論理的に実証可能なことを積み重ねていった先に、最適な答えがある」「前例をもとに分析を行い、業務を進めた先に、より先進的な何かが見つかる」などの日常的によく使われる論理的思考、いわゆるロジカルシンキングばかりが肯定されている「従来の仕事のあり方」や「価値の生み出し方」に疑問を投げかけるものです。
そして、
「常識にとらわれないで、考えてみよう」
「前例とは違ったことにでも、恐れず踏み出してみよう」
「白と黒の間にある灰色の領域を活用してみよう」
という柔軟な考え方を勧めるものでもあります。それを本書では、「余白思考」と名づけて提案をしています。もちろん、ただ闇雲に感覚的に行うのではない、ノウハウとしての提案です。