iPhoneユーザーの約20%が愛用しているというiPhone SE。その後継機種となる新商品iPhone 16eが2月28日に発売される。ITライターの山下達也さんは「SEシリーズと比較してiPhone 16eは割安感がダウンしたが、それ以外にも様子見したほうがいい理由がある」という――。
iPhone 16e
「iPhone16e」の外観 出典=Apple公式サイト

なぜこんなことに? ファンを失望させた残念な価格設定

少しでも安価にiPhoneを手に入れたいという層に人気を博してきたiPhone SEシリーズ。特に2020年4月に発売された「iPhone SE(第2世代)」は、64GBモデルが税込み4万9280円と圧倒的な低価格が支持された。当時のメインストリームモデル「iPhone 11」が税込み8万2280円だったから、実に約4割も安い選択肢が登場したことになる。

その後継機「iPhone SE(第3世代)」では64GBモデルが税込み5万7800円とやや値上げされたものの「iPhone 13」(税込み9万8000円)と比べて割安な価格設定を維持。スマートフォンなどのデジタル機器が円安や世界的な半導体不足の影響を受けてどんどん値上げされていく中、「ほどほどの性能で満足」なライトユーザーを中心にシェアを拡大していくことになった。

そして、2025年2月19日深夜(20日午前1時)、SEシリーズ第4世代目に相当する「iPhone 16e」が発表された。しかし、その価格はまさかの税込み9万9800円。近年の物価高などもあって誰もがある程度の値上げを覚悟はしていたが、昨年9月に発売された「iPhone 16」(税込み12万4800円)との価格差はごくわずか。「次のモデルで買い換えを」と考えていた人々を絶句させることになってしまった。

【図表】iPhone SEシリーズとiPhone16eの比較
筆者作成

下位モデルにこんな高性能は、誰も望んでいなかった?

もちろん「iPhone 16e」が高いのには理由がある。内蔵ストレージの倍増や大画面・高画質化、高速化などほとんどの点で大幅なハイスペック化が図られているためだ。その性能は「iPhone 16」に肉薄しており、大画面有機ELディスプレイ搭載などはSEシリーズとしては明らかにオーバースペック。これでは安くなるわけがない。SNS上でも「もっと低性能でいいから安くしてほしかった」という声が多く上がっていた。

では、なぜアップルは「iPhone 16e」をそれほどの高性能モデルにしてしまったのか。その背景には、同社が昨年末から英語圏向けに提供開始している生成AI機能「Apple Intelligence」(日本では4月初旬よりサービス開始)を普及させたい思惑がある。