「余白」があると人生が楽しくなる

いいプロジェクトの前後には、いい余白があります。

クリエイティブなチームは、メンバーが余白を持っています。

余白の中で試行錯誤するからこそ、新しい価値を生み出すことができます。

家族の一人ひとりがのびのび自分らしくいられる家庭は、心地いい余白を皆で共有しています。

もっといえば、余白のつくり方がうまい人は、人生を楽しむのもうまい。古来、日本では、侘寂わびさびを愛し、枯山水かれさんすいに美を感じ、禅僧のような「持たない暮らし」「シンプルな生き方」に敬意を払い、その生き方に学んできました。その背景にも「余白」の存在があります。

月山水、日本の伝統造園
写真=iStock.com/kojihirano
※写真はイメージです

仕事や人生を楽しむコツとしての余白を、皆さんにも味わい、身につけていただけたら幸いです。

余白とは「成長の余地」である

本書ではまず第1章で「余白とは何か」を解説した後、第2章以降で「いい決断や判断をする」「いい人間関係を築く」「コミュニケーション能力を高める」「自分を成長させる」という四つの切り口から、余白の生かし方を説明していきます。

その前に、僕の考える、大きく二つの意味での余白の大切さをお話ししておきます。

①「自分の中」の余白

まず一つ目は、「自分自身が、自分の中に余白を持つ」という意味での余白です。

何か新しいスキルや能力を身につけようとするとき、余白はとても大事です。余白こそが成長の余地であり、自分自身の伸びしろになります。

自分自身の中に余白をつくるためには、「こういうときはこうすべき」「これが正しい、これは間違い」といった先入観や偏見から、いったん距離を置く必要があります。

「こうすべきだと思っていたけど、別のこういう方法もあったかもしれない」

「これは間違いと思っていたけど、視点を変えたら間違いとも言い切れないのかも」

という異なる考え方や価値観の入り込む余裕が、余白です。

たとえば決断において、「これが正しい。それ以外はダメ!」と思っていては、今よりいい決断をすることはできません。そこに少しの余白をつくって、別の可能性を視野に入れる。そうすることで、決断や判断の幅が広がり、精度が上がっていきます。