アーティストは「ひらめき」を得るためにどんな工夫をしているのか。アートディレクターの山﨑晴太郎さんは「私は朝晩2回、風呂に潜って、無心になる時間を作っている。名経営者といわれる人は、ランニングやジムでの筋トレ、サウナやトライアスロンなどを趣味にしているのも、それと同じではないか」という――。
※本稿は、山﨑晴太郎『余白思考』(日経BP)の一部を再編集したものです。
インスピレーションを否定していい結果は生まれない
僕は、どんな決定も、なるべく即座に行うことにしています。それには理由があります。
一つは、単純に、悩む時間がもったいないから。「悩んで時間をかけて決めたほうがよい結論が出せる」「多角的な視点から物事を検証したほうがいい結論になる」という決断の方法論を、僕はあまり信用していません。それより、最初のインスピレーションを信じ、そのインスピレーションの精度を上げていくほうが、考え方としてシンプルです。
最初に「何かおかしいな」「ちょっとひっかかるな」と感じたとき、たしかに「よくよく話を聞いてみれば、それもありかも」と説得され、最初のインスピレーションと異なる判断をすることがあります。
でも、こういうときに最初のインスピレーションを否定して、いい結果になったためしがありません。また、最初に自分のインスピレーションを否定しているので、その延長で判断が必要な場面でも、その精度は徐々にずれていく気がします。
というわけで、判断の精度を上げるために、資料を読み込んだり、情報収集したりということには時間をかけるけれども、いざ、判断するとなれば、決断は一瞬。それが僕には性に合っていると思います。