「インターンシップ」と称するルール破りが横行

経団連加盟企業の抜け道を使ったルール破りは、実に巧妙である。説明会開始前から、インターンシップの名の下に、学生との接触と囲い込みがすでに始まっている。説明会開催に当たっては、各大学の就職担当部署や就職活動に関連する活動を行っているサークルとの綿密な打ち合わせを行っている。このようなサークルに参加する学生には、将来の就職に有利になるかもしれないという打算が含まれている。

説明会は、すべての3年生を対象としているのではなく、企業側が望ましいと考える大学に限定して行われている。「学歴フィルター」である。説明会を予約制にしている理由は、「想定外」の学生が応募して来たときに、すでに満席と回答するためである。説明会を通じて、学生の個人情報を収集することは禁止されているが、そのルールも決して守られているとは言えない。

6月が採用選考の解禁となっているが、事実上は、6月の早い段階で、内々定、あるいは、内定を学生に伝えている企業が多い。8月が採用選考の解禁となっていた時期は、採用選考解禁日の初日が事実上の内定日であった。8月解禁から6月解禁に変更したのは、8月初旬は、ほとんどの大学の前期(あるいは春学期)の試験期間中であるという大学の学年暦に経済団体が無知であったというお粗末な話であった。

また、8月から6月へと2カ月も前倒しにしたのは、「学業優先」という言葉が、本心ではなかったことに証左でもある。今回の不策定に関しては、これまでのルールに基づくと、オリンピックの開催と時期が重なり円滑な採用活動が行えないという声が、もしかすると反映されているのかもしれない。

欲しくない人材から「原石」を探さないといけない

夏場にスーツ姿で走り回っている学生を目にすると、複雑な気持ちになる。現在は、売り手市場であるにも関わらず、まだこの時期、就職活動を続けている学生は、数多くの企業で面接までこぎつけることができなかったか、面接の初期段階で選考に漏れた者である。

学生は、たくさんの選考漏れを経験しているので、すでにこの時期には自信を失っているし、アイデンティティも崩壊寸前の状態にある。そのような状況の中、彼らは、各企業の計画している採用予定人数から、早期に内定を勝ち得た学生の数を差し引いたわずかの残席を勝ち取らないといけない。欲しいと思っている学生には、企業はすでに内定を出している。

つまり、積極的には採用しようとはしなかった者の中から、将来、光るかもしれない原石を探そうとするのが、夏以降の企業の採用活動となる。当然のことながら、企業はより慎重になり、採用決定までには時間がかかるのである。

とにかく偏差値の高い大学から学生を取りたい

さて、これまでの「指針」に示されたルールの変更、そして、今回の「指針」の不策定の背後には、企業側の共通した考え方が存在している。

「大学生が大学で学ぶことにはほとんど意味はない。学業重視は、建前上、うたわないといけないという世間体に配慮したものであって、それ以上の意味はない。大学の格を示す偏差値こそが重要であって、偏差値の高い『優秀な学生』が確保できればいい」