世界で群を抜く「数学先進国」だった日本
そこでまず、「喜寿」から検証してみることにしよう。「喜」は楷書体だが、これを草書体にすると「七」が2つと「十」の字で構成されているわけで、「七十七」と読むことができる。
一方、「米寿」については「米」に注目してほしい。この漢字を分解すると、引っくり返った「八」と「十」、そして「八」になる。その3文字を組み合わせると「八十八」になるわけだ。
次に「白寿」であるが、「白」に「一」の文字を足すとどうなるだろう。「百」にならないか。つまり「百引く一は九十九」で、99歳のお祝いを「白寿」と呼ぶようになったのである。
先ほどの「米寿」と似ているものに、「半寿」がある。「半」の漢字を分解していくと、引っくり返った「八」と「十」、そして「一」になる。つまり「八十足す一は八十一」ということで、81歳の長寿のお祝いのことを「半寿」と呼ぶようになったのだ。
では「茶寿」は何歳の長寿のお祝いか?
くさかんむりを分解すると「十」が2つになり、残りは引っくり返った「八」に「十」、そして「八」。つまり「十足す十足す八十足す八は百八」で、答えは108歳のお祝いということになる。
以前、私はこの連載企画で江戸時代に発展した和算について紹介し、日本が世界で群を抜く「数学先進国」であったことに触れた。その日本には、昔からご祝儀のお金を紙に包んで渡す文化がある。きっと同じような感覚で、長寿の数も「漢数字」で包み込んだのかもしれない。
そう考えると、日本人の数字に対するセンスの高さを、長寿の祝いの文字から、改めて感じ取ることができないだろうか。