「近いものから遠いもの」という順序が大事
作家をはじめ文章のプロが著した文章術の本は数多くあるが、今回は数学の視点から「読みやすい文章」の技術をご紹介したい。
ポイントは、数学の基本概念のひとつである「距離」を用いることで、注意するのは次の2点だけである。
技術(1)「いままでに書いた話題に近いものから遠いものへという順序で言葉を並べる
技術(2)「書き手に近いものから遠いものへという順序で言葉を並べる」
2つのうち、(1)が(2)に優先し、(1)の「いままでに書いた話題に近い」言葉が複数あった場合に、(2)を適用する。どういうことか、具体的に見てみよう。
例文:「いま、私は、A社の資料を読んでいます。A社のB課長から、部下のCが、昨日、その資料を送ってもらいました」
この第1文の「いま」「私は」「A社の資料を」は、すべて「読んでいます」にかかる言葉だが、3つの順序を入れ替えても日本語の文法には反しない。第2文も同じく、「A社のB課長から」「部下のCが」「昨日」「その資料を」は、「送ってもらいました」にかかる言葉だが、4つをどの順序に並べても文法には反しない。
したがって、この例文は文法的に間違いではない。しかし、なんとなくわかりにくくはないか。この違和感を、先述した2つの技術で解消していこう。
まず技術(1)の適用から。第1文は最初の文だから、すべてが新しい内容であり、「いままでに書いた話題」が存在しない。つまり、技術(1)を適用できず、文法的に合っていれば、とりあえずどの順序に言葉を並べ替えてもよい。