空腹と満腹では「ご馳走」の味は変わる

「同じ金額のお金であれば、いつでも同じ価値があるか?」。「もちろん、1万円はいつでも1万円の価値がある」――。

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はたして本当にそうだろうか。たとえば、会社で新規事業を立ち上げることになったとしよう。初年度の売上高の目標は100億円。やや厳しい計画ではあるが、新規事業チームが一丸となり、見事に100億円を達成した。その喜びはたとえようがないほど大きなものだろう。

そして、2年目の売上高も100億円増、3年目も100億円アップした。毎年100億円の増収というのは立派な成果だが、では2年目と3年目の満足度は、初年度と同じだろうか。

1年目は0円から100億円になったのに対し、2年目は100億円から200億円と2倍増である。3年目は200億円から300億円だから、前年比50%増。4年目も100億円増えたとすると、同約33%増である。十分立派な数字だが、しかし同じ100億円でも前年実績に比べると伸び率は年々小さくなっている。

この売上高の推移を満足度の観点から見ると、1年目や2年目のほうが4年目よりも大きかったと考えられる。伸び率が大きいからだ。つまり、同じ100億円の増収でも、満足度は状況によって変わるということである。

これは食事に置き換えるとわかりやすい。目の前にご馳走があるとする。あなたはいまとても空腹なので、非常においしく感じるだろう。このときの満足度を100点とする。ところが、あまりお腹が減っていないときに、同じ料理を出されたとしたらどうか。おそらく満足度は50点くらいのはずだ。

つまり、モノの価値というのは、そのモノをあまり持っていないときには大きく感じ、すでにたくさん持っているときにはそれほど大きくは感じないものなのだ。