「限界効用逓減の法則」は証明されていない

この性質を表したのが図である。売上高が増えるほど満足度は大きくなるので、グラフは右肩上がりになっている。しかし、直線的に上昇するわけではなく、最初は急に高くなるが(満足度が大きい)、次第に傾きは小さくなっていく(満足度が減っていく)。

このように持っている財(モノやサービス)が1単位増えたとき、満足の程度がどれほど増えるかを表す数値を「限界効用」と呼ぶ。これは近代経済学の概念のひとつである。図のように、一般に持っている量と満足度の関係は上に凸の曲線になる。つまり、持っている量が増えるにしたがい、傾きはだんだん小さくなっていく。逆に限界効用はだんだん小さくなっていくのだ。

これは、持っている量が増えるにしたがい、限界効用が小さくなっていくことを表している。この性質を「限界効用逓減の法則」と呼んでいる。今回の例では、同じ100億円の増収にもかかわらず、満足度合いは次第に小さくなっていくというわけだ。

ちなみに、この法則は証明されていない。傾きや角度などはその時々の状況によって変わる定性的なものだ。このように理由は定かではないが、ものごとの間に普遍的、必然的な関係が成り立つものを「法則」という。逆に数学で証明できるものは「定理」である。

今回のように数字を使わなくてもさまざまな思考に役立つのが、数学の魅力のひとつである。

(構成=田之上 信 写真=iStock.com)
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