もちろん、価格に見合ったおいしさがあれば問題はない。大戸屋はセントラルキッチン(複数店舗分の大量の料理をまとめて製造する施設)を持たず、基本的に店内で加工・調理する。手間と時間がかかるが、その分おいしさは増す。そういった点を評価し、現在の価格でも満足している人は当然いる。ただ、客数の減少に鑑みると、そのように捉えている人が減り、「おいしいけれど価格が高い」と考える人が増えているのではないか。

01年頃、大戸屋の定食の主要価格帯は600円台だった。そこから値上げや高価格メニューの投入を順次行った結果、既存店客単価は上昇し続けている。また、近年において1000~1500円の高価格定食を投入したため、「大戸屋は高い」という印象が広まった感は否めない。

セールスポイント「店内調理」がコストを増やす

価格引き上げの要因は、売りの店内調理だ。大戸屋では生野菜にカット野菜を使わず、店で洗って皮をむいて仕込んでいる。魚や肉も、店内で炭火で焼いている。かつお節も店で削っているし、豆腐まで作っている。当然手間と時間がかかり、コスト増の要因となっているのだ。そのコストをカバーするために価格を引き上げざるを得なくなっている。

期間限定商品の「大戸屋のうな重」。価格は1851円(税込1999円)。

たとえば1月29日から3月末まで店舗限定で販売する『大戸屋のうな重』は、「契約養殖場で育てたうなぎを、お店で蒸して、たれを塗り、炭火でふっくらと焼き上げました」(同社のプレスリリースより)という渾身の商品だ。価格は1851円(税込1999円)。大戸屋の常連客は、この価格をどう受け止めるだろうか。

また、扱うメニュー数が多いことも、コスト増の要因になっていると考えられる。定番の定食メニューだけで43種類もあるのだ。すべての調理を従業員に習得させるためには、相当の手間とコストがかかるだろう。外食産業全体に人手不足が深刻化するなか、そういった負担が重くのしかかり、“儲ける力”を削いでいる。