『THE W』で審査員を務めた人たちは、もちろん真剣にジャッジしていただろう。だが、ほかの賞レースにはある、芸人が芸人をジャッジするときのヒリヒリとした緊張感は薄かった。それは視聴者にも伝わるものだったと思う。

松本人志は後日、自身が出演する『ワイドナショー』(フジテレビ/17年12月17日放送回)で、「大会としてはまだまだ精度を上げていかないといけないでしょうね」と語っていた。これは「女芸人のネタの精度が低い」といっているのではなく、大会自体の意図や審査システムの精度について言っているのだと私は受け取った。

また爆笑問題の田中裕二も、ラジオ『JUNK 爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ/17年12月12日放送回)で、「キャラ大会というか。ネタという感じではなかったよね」と語っている。これも、決勝戦に集まった芸人のネタのタイプが多様だったことから、大会としてどこを目指しているのかが曖昧だったという意味だと捉えられる。

ピン芸人、コント、漫才など、ネタをジャッジする番組はたくさんある。今回の『THE W』は、女性であればどんなジャンルのネタもアリだったため、審査する側は難しかったはずだ。だが、大会の狙いが曖昧なうえに、緊張感の少ない審査システムになっていることは、参加する女芸人にとっての不利益のひとつだと感じる。キャラの強い芸人を求めているのなら、そう打ち出せばいい。今後は、審査の仕組みを修正し、大会自体の狙いもより明確にして、女芸人がネタをしっかりやれる環境を整えてほしい。

「まだまだお笑いは男社会」と大ベテランが言う

女性漫才師のはしりであり、2016年から『女芸人大集合!なんばでどやさ!』というイベントを主催している今くるよは、「今は女芸人も増えてきましたけど、まだまだお笑いは男社会ですから。こうして女の芸人だけのイベントをやろうとしても、いまだに“無理と違うか?”と否定的な意見もあると思います。でも、女芸人たちがきちっとネタをして、お客さんに笑っていただく、時には批判もしていただく場は、今後のために必要なんです」(「週刊女性」17年11月14日号)と語っていた。

女芸人のあり方は、いま変化のさなかにある。森三中の村上知子は、トリオで出演した『ウチくる!?』(フジテレビ/17年7月9日放送回)で「女芸人って、(引用者注:ひと仕事につき)ひと枠ってけっこう言われてるじゃないですか。こうやってそろったり、番組でみんなでいろんな形で成し遂げたり、まさかこんな形で一緒に仕事できるとは思わなかったので、本当に環境が変わって、みんな楽しく仕事ができてるのがうれしくて」と語っていた。