「この子の心には『15の尾崎豊』がすんでいる」

●思春期の子どもに親ができること:その1
「壁に穴が開いたら、赤飯を炊け」
(四つに組まずに上手にいなせ)
写真=iStock.com/Smitt

思春期男子の母から寄せられる悩み事のひとつに、子どもが「蹴り」を入れて壁を壊したのだけれど、どうしたらいいだろうか、が挙げられる。

自宅の壁だけでなく風呂場のガラスドアなども破損されるケースが多いが、断言しよう。子育てしていれば大なり小なり「通る道」である。

私個人は日本の近代家屋の壁面の薄さが「貫通」を招く要因ではないかと勘ぐっているが、思春期の脚力(拳の場合もある)を甘く見てはいけない。彼らは前述した「カエルもどき」であるため、力の加減ができない。彼ら自身も思わぬ事故発生で、びっくりしている状態なのだ。

つまり、何かムカつくことがあり、当たる先に選ばれやすいのが壁ということで、壊した張本人には破壊の意図はないことのほうが多い。

▼子供が壁に穴を開けたら赤飯を炊こう

ここで親の出番である。赤飯を炊こう。「開通記念日」を祝おう。

なんなら、幼少時の「柱の傷の背比べ」を模倣するように、開通した穴の横に年月日を書いてもいい。「(蹴破れるほどの力が付くなんて)大きくなったね~」と笑い飛ばしてしまうのだ。

思春期の子どもに対峙する時の大事なポイントは「四つに組まない」ことにある。正面からぶつかるのではなく、子どもの想像の“圧倒的斜め上”を行くのだ。子どもは壁を壊したことで怒られると身構えている。そこにまさかの「笑い」が降って来るので、“戦闘モード”が消滅しやすくなるのである。

こういう場面に遭遇したとき「家庭内暴力!?」と連想するのは早とちりだ。親としては「ああ、この子の心の中には『15の尾崎豊』がすんでいる」と思ったほうがいい。

いまは思春期の子どもを力ずくで押さえつけるよりも、危うさ・凶暴さを上手にいなすことを考えたほうが、結果的に親子関係がうまくいく。さまざまな相談事例を見て、私はそう思う。