思春期・反抗期の子は「柳に風」
思春期の子どもというものほど扱いにくい存在はない。彼らがコミュニケーションという言葉を自ら放棄するためである。
たいていの子どもは親に対して3語以上は話さなくなる。「微妙」「普通」「別に」というこの3語をヘビーローテーションするようになるのだ。3語ならば、まだマシでさらに進化を遂げると口すらも開けなくなる。
すべての会話を、
「ん」(聴こえているとの意思表示)
「あ」(肯定するとの意思表示)
「ぬ」(否定するという意思表示)
「で?」(もう親との会話はめんどいので終了しますが、何か? という意味)
という4語ですべての会話を成り立たせようとする。
ある母は「りんこ(筆者)、確か、私はわが子に(ひらがな)51文字を必死になって教えたはずだけど、残りの47文字はどこ行ったかわかる?」と真面目に聞いてきた。このように「47文字行方不明事件」が発生することは普通なのだ。
たまにわが子が言葉を発しているなぁと思って、嬉しくなって耳を大きくしてみると、その口は「か・ね・を・く・れ」と発声しているだろう。
それはあなたの子どもが特殊なのではなく、そういう暗闇に閉ざされた年頃に突入なさったということに他ならない。
朝は図体のデカい着ぐるみが半目を開けてソファーに座っていて、動き出す気配もしないだろう。
女の子であれば玄関先で焦りながらお弁当箱を差し出す母に「は? お弁当は要らないって言ったっしょっ!」と冷たい声で言い放ち、そのまま後ろ手に玄関ドアを閉めるだろう。
「『は?』はこっちだよ! そんなん1回も聞いてませんけど? 1万年前から言い続けてるような口聞くな!」と怒鳴っても、敵は既に圏外である。
まあ、これが思春期の子どもを持つ家庭の正しい朝の風景である。
この年頃はすべてがめんどくさいのだ。なので、親に向かってこう言うだろう。
「あ~、めんどくせ! 息すんのもめんどくせ!」
親も対抗措置を取らざるを得ないので、こう返しがちだ。
「そんなに何もかにもがめんどくさいなら、息するのも止めれば?」
子どもはこう言い返すはずだ。
「息するのを止めるのも、めんどくせ!」
不毛な会話を続けても、親の気持ちが炎上するだけなので、わが子に思春期が訪れたと察知した親はこういう心構えでこの時期の嵐を乗り切るに限る。