「お祈りメール」でやっと覚醒した
(5)親は鉄板の上であがこう
もし、あなたの子どもが学校という名の海の深海に沈んでいたとしても、卒業したら意外とおいしい道が待っていることもある。
先日、偶然、ウチの愚息(25歳)が卒業した高校の校長に会ったら、開口一番「たこ太(←愚息の名まえ)、どうしてる?」って えらい心配そうな眼差し付きで言われた。
文句なく、ありがたい。
自分たち親以外でわが子を気にかけてくれる人がいるということは本当に幸せなことだ。バカのアホのと、実の親からも先生方からも言われ続けた子の方がどっこい打たれ強い。
怒鳴ってばかりで「この子はグレる」って心配しなくても、子どもはそんなんハナから聞いちゃない。親は安心して、自信を持って、そのわが子のよろしくない態度を「指摘」すればいいのだ。
知人が難関中高、深海魚(成績不振児)→ようやくそこそこ大学入学→だらけた学生生活→就職留年という道筋を辿った子どもを持って嘆いていたが、その子23歳でようやくスイッチが入った。
自ら就活塾に通い、TOEICの点数を上げるために英語学校に通い、中高時代のトップ層が行くような会社に就職したのだ。
知人はこう言った。
「子どもの『やる気』を引き出したのは親の小言でも先生の忠告でもなく、就活時の雨あられの『お祈りメール』(※不採用通知の際に企業側から、貴殿のご健勝やら今後のご活躍やらをお祈りいたします、という体裁でお断りするメールのこと)だったんだね。親に必要だったのは焼けただれた鉄板の上にいながら『心頭滅却すれば火もまた涼し』のような度胸が据わった親の態度だったのかも……」
彼女に、私はこう言った。
「私たち、間違っていたかもしれないけど、でも一生懸命だったよね……」
子育てがほぼ終わった(末子が大学4年生)私は今、こう思っている。
息子にも娘にも内心、恨まれているのかもしれないけれど、あの子たちも大人になって「まあ、アンタごときの割には、頑張って(子育てして)たんじゃないの?」って笑って言ってくれるような気もするのだ。
だから、私は今、わが子の思春期を迎えて右往左往している親御さんたちにはこう言いたい。
大抵のことはどうにかなるし、事実、全員どうにかなっているし、あなたの悩みは大きな世の中から見たら大した悩みではないのである。
親は熱く焼けた鉄板の上でのたうち回るしかない。それも親になった者にだけ許された特別な感情なのだから。