1組30人前後の生徒を受け持つ担任教師にとって「学級経営」は重要な仕事。現役教師で新著『新任3年目までに知っておきたい ピンチがチャンスになる「切り返し」の技術』(明治図書)を著した松尾氏が、教師向けに書いた子ども対策本のエッセンスを親向けに解きほぐしてくれた。
「言えばわかる」子どもはいない
[1]「何度言ったらわかるの!」と何度言ったか
「何度言ったらわかるの!」「いい加減にして!」
こんな言葉をわが子に言い放ったものの、あとで自己嫌悪に陥った経験のある人も少なくないでしょう。
親は、日常の生活習慣などでわが子に守らせたい点について、毎日毎日、耳にタコができるほど注意しています。
しかし、どんなに言っても守るのはその直後だけで、3分どころか「3歩で忘れる」という表現がぴったりという残念なパターンも少なくありません。
親は批判の目を自分にも向けます。自分はいつも同じことを子どもに言っている。なぜ、子どもをいい方向に導けないのか。聞く耳を持たせることができない自分の力不足なのか……。
怒り気味に子どもにお小言を言い、その度に“裏切られる”親の心理・行動の背景には、「言えばわかる」という、悲しいほどに真実とは真逆の誤認があります。言ってわかるようなら、とっくの昔に直っていますというのが真実です。論理的に考えて、言って直るなら、古今東西どのご家庭でも穏やかな家庭風景が広がっているはずです。
現実はそう甘くありません。
親のすさまじいばかりの「口撃」にも全くへこたれず「数々の試練をくぐり抜けた猛者」が、今目の前にいる子どもです。
「何度言ったらわかるの!」への正直な子どもの側の本音は「何度言っても忘れるの」かもしれません。
子どもからすれば、言われている内容に対し、切実感がないわけです。子どももその内容が大切なのはわかっています。おそらく、わざと破ったり、悪気があったりするわけでもありません。
しかし「“本人事”になっていない」という状態です。他人事なのです。ここをどれぐらい「わかりたい、直したい」と子ども自身に思わせるかがポイントです。
そして、ルールは多いほど守られないというのも考えるべきポイントのひとつです。