「いろいろな解法を思いつく子こそ賢い」

では、もうひとつ解法を紹介する。

図形問題では<分ける><全体から引く><移動>のいずれかを使う確率が高い。次の解法は、図形を分けて、移動させる解き方である。

図のように三角形ABCを移動させると、直角二等辺三角形になる(図1、2)。面積が64平方cmの直角二等辺三角形。先ほどの問題の答えと同じだ。

あとは、次のいずれかのアプローチで長さを求めていけばよい(図3、4)。

【図3】64×4=256 ●×●=256 ●=16cm 16-10=6
【図4】□×□=64 □=8 8×2-10=6cm □は辺ABの長さと等しいので、答えは6cm

今回は、簡単な問題を使って、より難度の高い問題を解くことができるような配列にした。過去の問題やこれまで習ったことを「使う」ことで、センスは磨かれる。自分には才能がないからといって諦めることはない。答えにたどり着くためのアプローチを複数考える癖をつけ、「習っていない、知らないからできない」ではなく、「習った(経験した)何と近いのか、何を応用すれば正解にたどり着けるだろうか」と考える訓練が、センスを磨く。

今年、最難関校のひとつと言われる、筑波大附属駒場中学校に合格した生徒のエピソードを紹介したい。小学6年生の彼が質問に来た時は大変だった。

「先生、これを教えてください」ではなく、「先生、ぼくはこう解いたのですが、ほかに良い解き方はありませんか?」だったからだ。

いろいろな解法を思いついてこそ賢い、と授業中に口ぐせのように話し、言葉のやりとりをしていたことが、この6年生だけでなく塾講師の私の成長にもつながったのだ。

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