「ギャンブルに勝ちたい」という欲望から生まれた学問「確率論」は何をもたらしたのか。パンサー尾形貴弘が難解な数学の世界を大真面目に解説するNHKの知的エンターテインメント番組「笑わない数学」の放送内容を再構成した書籍より、一部を紹介する――。
※本稿は、NHK「笑わない数学」制作班編『笑わない数学』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
数学者たちを巻き込んだ大論争
早速ですが、問題です。
あなたはいま、あるテレビ番組に出演し、豪華賞品をかけたゲームに挑戦しています。そのゲームは次のようなものです(図表1)。
扉はどれも同じ見た目で、手掛かりは全くありません。また、車の隠し場所はスタッフがサイコロか何かで決めていて、どの扉を選んでも正解である確率は3分の1です。
あなたが直感でAの扉を選び、その扉を開けようとしたとき、司会者が待ったをかけます。司会者はスタッフ側の人間ですから、正解の扉を知っています。心優しい司会者が、何の手がかりももっていないあなたに、正解に至るヒントをくれるというのです。
そのヒントは次のようなものでした(図表2)。
司会者はこのように、あなたが選ばなかった扉からハズレの扉を開け、こう言います(図表3)。
さて、ここで問題(図表4)。
さてどうでしょう? 残った扉はAとBの2つなのだから、変えても変えなくても当たる確率は2分の1でしょうか?
一見簡単そうなこの問題ですが、初めて出題されたとき、数学者や数学愛好家を巻き込んだ大論争が巻き起こったのです。