「何とかチルドレン」にはうんざり
2つ目の選択肢は選挙制度で、今の小選挙区制をやめてかつての中選挙区制なり何なりに変えるかどうか。本連載で何度も指摘しているように、小選挙区制はブーム次第で雪崩現象を引き起こしやすく、政治が安定しない。ブームに乗じて当選した「何とかチルドレン」のお粗末な行状にはうんざりである。選挙区の規模が市長選レベルになって、地元への利益誘導に熱心な小粒な政治家ばかりが増えて、天下国家や外交、国の財政をきちんと語れる政治家が出てこなくなったのも大問題だ。
もうひとつ選択肢があるとすれば、やはり憲法改正だろう。それは憲法9条に第3項を書き足すようなその場しのぎの「加憲」や「改憲」ではなく「創憲」だ。今の憲法のどこにどういう問題があるのか、足りないものは何か、という議論を国民を巻き込んでゼロベースで行うのだ。それぞれの政党が憲法の腹案をつくって国民に提示し、国民投票を駆使しながら1章ずつ練り上げていく。
たたき台をすでに30年ほど前に拙著『新・国富論』『平成維新』などで提案している私の経験上、本気でやれば10年はかかる難作業だ。あちこちで制度疲労を起こしている日本のカラクリをつくり替えて再起動するためには絶対に必要な作業だ。ただし、このような憲法改正はもちろん、財政規律や選挙制度改革にしても今回の泥縄選挙の争点にはなりそうもない。
「与党で過半数を取れなければ辞任する」
安倍首相は勝敗ラインを自民公明の与党で過半数(233議席)と設定して、「与党で過半数を取れなければ辞任する」と述べた。過半数を確保できれば自分は国民から信任されて、“もりそば”“かけそば”の禊ぎは済んだということにしたいのだろう。今回の選挙結果を予測するのは難しい。
民進党がゴタついて、小池新党の体制が整わないまま選挙戦に突入していれば、安倍政権に対する怒りや批判の持って行き場がないということで、安倍政権の思惑通り、投票率も低調になって自民公明の与党が過半数を維持する目はあったと思う。批判票が集中すれば共産党も議席を伸ばしただろう。
しかし東京都の地域政党である「都民ファーストの会」が国政進出する形で全国政党「希望の党」が発足して、党代表に小池百合子都知事が納まったことで状況は変わった。都知事の側近や民進党の離脱組が党代表になって、小池都知事が後方支援に回るなら、新党はそれほど盛り上がらなかったと思う。