地方の有権者が「都民ファースト(都民第一)」という希望の党の根っこにシンパシーを感じるとは思えない。むしろ東京一極集中に対して反感を持ちそうだ。しかし小池都知事が最前線に立って、サプライズを連発する“小池劇場”が連日のようにメディアで取り上げられたら、これはブームになりかねない。
前原誠司という政治家の本性
先の東京都議選で「都民ファーストの会」は都議会公明党と手を組んで圧勝、自民党は大敗した。国政選挙での再来を自民党が恐れているのは間違いない。ただし、国政では公明党は自民党と組んで与党を形成している。このねじれが一番選挙区の多い東京ブロックの結果にどう影響するかがまだ見えない。
奇襲を仕掛けた安倍政権としても、今回の解散総選挙で野党再編がこれほど劇的に進むとは思ってもみなかったのではないか。民進党の前原誠司代表は「名を捨てて実を取る」と語って希望の党への合流を決断した。参議院は残るとはいえ、民進党は事実上の解党である。
私は前原誠司という政治家をよく知っている。清濁併せ呑めないタイプというか、清濁を判断できないところがあるのだが、今回の決断はらしくない思い切りだったように感じる。やはり事前に小池都知事と話を詰めていたのだろう。
現時点では民進党の立候補予定者全員を希望の党が公認するのか、小池都知事が言うような“選別”が行われるのかはわからない。しかし希望の党が民進党の持つ(150億円とも言われる)政党助成金目当てに大半を取り込めば、国政への足がかりレベルではなく、政権選択選挙になる可能性も出てくる。大阪府の松井一郎知事(日本維新の会代表)や愛知県の大村秀章知事の協力も取り付けて、希望の党と維新の会の距離も縮まった。
しかし、この選挙協力は“小池衆議院議員”が当選していないと首班指名で維新が(そして希望の党さえも政策が類似している)安倍氏に入れる可能性がある。つまり今後小池氏が情勢によっては衆議院選に出馬し、都知事後継として小泉純一郎氏(75歳)を指名する、などのどんでん返しがまだまだ続くのだろう。
誰と誰がどういう形で手を組むのか、最後までもつれて、小池劇団の大根役者が日替わりメニューで繰り出される混迷した選挙戦になりそうだ。