このまま国会を開いても“もりそば”“かけそば”のおかわりで集中砲火を浴びるのは目に見えている。それで国民の信頼を失ったら次の選挙は戦えない。あと数カ月もすれば衆院の任期4年目に突入するから、伝家の宝刀である“解散”の効力も薄れる。だったら民進党はぐらついているし、小池新党の体制も整っていない、北朝鮮情勢の緊迫化で支持率も多少は持ち直した今のうちに解散総選挙に打って出れば勝てる――。機を見ることにかけては敏な麻生太郎副総理から持ちかけられて、安倍首相は決意したのだ。

常にポピュリスト側が勝ってきた

「大義なき解散」という批判は当然だ。初めに解散ありきなのだから。解散を決断した安倍首相は岸田文雄政調会長に「解散の大義名分を考えろ」と指示したという。捻り出した大義というのが19年10月に予定している消費税増税の増収分(2%増税で約5兆円)の使途変更である。

高齢世代に偏っていた消費税の使い道を子育て世代などにも広げて、全方位型の社会保障を実現するための財源に増収分の使途を変更する。ついては「国民との約束を変更して国民生活に関わる重大な決断を行う以上、国民の信を問わねばならない。よって解散する」という屁理屈だ。

消費税を5%から8%に上げた際の増収分の8割は赤字国債の穴埋め、つまり国の借金の返済のために使われた。次の消費税引き上げの増収分は、社会保障の充実と国の借金返済に半分ずつ充てるという。アベクロバズーカで国債を乱発、100兆円規模の予算を組んで赤字を垂れ流しておきながら、増税分でさらに国民サービスをしようというのだから、選挙対策に税金をばらまく、というとんでもない話だ。

しかし、「全世代にばらまきます。いいですよね」と問われれば、国民はNOとは言わないだろう。希望の党はさらに進んで消費税増税封印、というのだから、サービス合戦となり選挙の争点とはならないだろう。

今の日本で国政選挙の争点になるような選択肢は2つ、3つしかないと私は思う。ひとつは財政破綻、デフォルトを避けるために、国民サービスを減らしてでも財政健全化を進めるか否か。財政出動か財政規律かというのは自民党内でも意見が二分してきた問題で、常にポピュリスト側が勝ってきたという歴史がある。