話してもダメ、離せばわかる

(3)「友だちなんか、いなくたっていいじゃないですか」

とはいえ、タモリも、友人をつくることを否定しているわけではない。「人間関係は、ベッタリではなく、ほどよい距離を保っていたほうがうまくいくと見ているのです」(同)。相手のことは、「話せばわかるじゃなくて、離せばわかる」ともいう。

たとえば、社内のある派閥に誘われたとする。派閥に入れば、ポスト争いなどで恩恵を被ることもあるが、ボスへの忠勤にも励まなければならない。ボスが失脚すれば、努力や期待が裏切られるかもしれないのだ。

(4)「緊張できるような仕事ができるっていうことを幸せに思うことですね」

アイドルから本番で緊張しないための秘訣を聞かれたタモリは、そう答えたという。「仕事は自然体で引き受け、淡々とこなすのがタモリ。『笑っていいとも!』の司会に抜擢されたときもそうでした」(同)。ただし、「ヤル気のある奴は去れ」がタモリの持論。下手なヤル気があると周囲が目に入らなくなり、仕事に支障をきたすからだそうだ。

若手社員が大型プロジェクトのリーダーに抜擢されたら、「失敗したらどうしよう」と、ひるむかもしれない。しかし、タモリのように「大きな仕事を任されて幸せ」と喜び、気負わずに取り組むべきなのだ。

(5)「すべてのジャンルで入門編はありえない」

住まいでも、ファッションでも、食べ物でも、若いうちから最高級のものに接することをタモリは勧める。「頂点を極めれば、視野が広がるし、精神的な余裕もできるので、寛容になれるということなのです」(同)

担当する仕事が商品開発でも、営業でも、普通なら「小さくても、まずは実績を上げないと」と考えがちだ。だが、思い切ってそのジャンルのトップを目指してみよう。その後の人生観や仕事のスタイルも大きく変わるだろう。

厳しい芸能界で揉まれながらも、長寿芸人となったタモリの人生哲学を参考にして、ビジネス社会をぜひタモリのように軽やかに、そして、いつまでも生き抜きたい。

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毎日新聞/AFLO=写真
(写真=読売新聞/AFLO、毎日新聞/AFLO)
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