オリンピックに向けて仕掛けスタート
私自身の原体験もあります。日本の大学への通学途中、あまりの混雑で乗換駅で降りられず、遅刻。満員電車人生を選ばないことを決心した瞬間でもありました。
早朝に快適出勤し、夕方早めに自分の時間を持ちたい人もいれば、子供の保育園の送り迎えや親の介護などでフレキシブルな働き方を求める家庭もあるでしょう。良質な職場環境を整えれば遠隔地での就労が可能なケースも多いはずです。鉄道会社と企業が提携し、郊外の駅近にテレワークオフィスを設ける試みも始まっています。
働く時と場所の自由度を高めることは、働き方改革の目玉であると同時に、3年後に迫る東京オリンピック・パラリンピック開催時の首都の交通混雑を防ぐ重要なツールでもあります。災害時に首都機能や交通手段が途絶えても、テレワークで業務を継続させられる利点も無視できません。
2012年のロンドンオリンピックでも、交通混雑の解決は重要課題でしたが、ロンドン市が企業に呼びかけたテレワークシステムは、今やオリンピックのソフトレガシーの1つとして社会に定着しています。日本でも時差通勤、テレワークを当たり前のものとする社会を実現したいものです。
さて、そのオリンピックですが、気運醸成を図るべく、様々な仕掛けを仕込む段階になりました。選手村や交通インフラ整備などハード面はもちろんですが、人々の意識をオリンピックに向けていきたいのです。
第1弾は、誰もが知っていて、勝手に体が動きだすほど定着しているラジオ体操の活用です。7月24日から9月6日までの期間、東京都庁職員は職場で午後2時55分から一斉に始めます。まずは都庁から始め、今後は日本中に広めてまいります。オリンピック・パラリンピック開催予定期間を、今から皆の記憶に刷り込もうという魂胆です(笑)。
準備することは目白押しですが、やはりオリンピックは楽しくなくては。当面の間、皆様はハラハラしながら新都議会を見つめられるかもしれませんが、オリンピック準備はワクワクしながら進めていきたいものですね。
1952年生まれ。カイロ大学文学部社会学科卒業。テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』などでキャスターとして活躍。92年政界に転身し、環境大臣、防衛大臣などを歴任。2016年、東京都知事に就任。